【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ～御曹司と溺甘な政略結婚～

「そんなにひどいですか？」
「目の下にくまがあるわよ」
「えーっ……」

　ショックを受ける私に梨沙が笑う。

「嘘よ。疲れた顔をしているけれど、いつもの通りよ」

　梨沙の冗談にホッとして、袋から出したクロワッサンや丸パンをいつものようにカゴの中に用意する。

　朝食の席で、金曜日のフライトで日本へ行くことになったと話すと、ジュリアンが大袈裟なほど驚く。

「ハル、いつ戻ってくるの？　そのまま日本にいるってことはないよね？」
「話の内容によって、いつになるかはわからないけれど、私は戻ってくるわ」

　重大な問題だったらすぐには戻ってこられないと思うけれど、それほどのことでもなかったら、数日でここへ帰ってきたい。

　静かに話を聞いていたオーリィ氏が口を開く。

「突然の連絡をしてきて一時帰国させるぐらいなのだから、大事な用事があるのだろう。状況がわかったら妻に連絡しなさい」
「はい。梨沙に電話します」

　私は神妙な面持ちで約束した。

「僕も日本へ行きたいな。お祖父さんとお祖母さんに会いたいな」

　梨沙の実家は東京の下町、谷中にある。日本が好きなオーリィ氏は家族を連れて、年に一度は梨沙の実家に顔を見せていた。

「今度はクリスマスに行くのよ。それまで我慢しなさい」

　梨沙がたしなめると、ジュリアンはガクッと肩を落とす。

「ずいぶん先だな……」
「ジュリアンが日本へ行くときは一緒に行こうね。東京を案内するから」
「ハル！　約束だからね」

　私の言葉にジュリアンの表情が明るくなった。