対立相手が婚約者。それって何かの冗談ですか?
3.潜入調査
帽子を目深にかぶり、ペンとメモを片手に日本歴史博物館と書かれた石でできたオブジェの前を通過した。

今まで、何度も外から眺めては、人の多さにただただ嫉妬してきたこの場所に、初めて潜入調査を行うことを決断した。

拡樹が館長をしている博物館が、どのように運営されているのか、そして、拡樹のことを知るうえでここに来ることが最も手っ取り早い方法だと思った。

入り口や受付は難なく通過し、展示フロアでの調査を開始した。

開放感のある広い通路のようになっており、展示フロアの入り口には、原始時代の石器やナウマンゾウの骨が展示されており、歩いて進んでいくにつれて時代も進む。出口では近現代の展示となり、文明開化で変化した人の暮らしや仕事の様子が再現されている。

そんな一通りの歴史の流れを音声ガイドで学ぶことができるようになっていた。

「よくできてる…」

穴を探してやろうという意気込みで来た恵巳だったが、圧巻の歴史資料に感心せずにはいられなかった。人を引き付ける仕掛け、そして勉強になる展示。正直、お金がかけられている感じは否めないが、何度でも来たくなるほどの面白さがここにはある。

「うちもこれくらいできたら、潰れなくて済むのかな…」

展示フロアを抜けた恵巳は、掲示板で情報収集をすることにした。この博物館では、定期的に企画展示も行われているようで、掲示板には、今後行われる企画のポスターが貼りだされていた。

テレビドラマとのコラボ企画や、蒸気機関車の歴史を振り返る企画などがある。そんな中で、1枚のポスターに目が留まった。
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