リンゴアメ.
石畳の脇には水が撒かれていて、日が暮れてもなお昼の蒸し暑さが残る。
ベビーカステラの甘い香りに、しょうゆが焦げた香ばしい焼きとうもろこしの香り。
屋台からは威勢のいい呼びかけが聞こえて、小さな子供たちがスーパーボールすくいに興じている。

この、地元の神社の小さな祭りには、子供の頃から親に連れられて行っていた。
毎年帰りにはりんご飴を買ってもらう。
味が特別好きなわけではないんだけど、飴は甘くて赤くて可愛くて。
小学校も高学年になると親ではなく、友達と行くようになった。それでも、帰りには必ず買っていた。

艶のある赤い飴がズラリと並ぶ。それを眺める私の少し前で、高野君が立ち止まって尋ねる。

「それ買うの?」

14歳になった今年は。
友達何人かと……高野君と、ここに来た。

「あっ、うん、あの…買ってもいい?」
「…いいんじゃね。食いたいなら買えば…」

そんなの俺に聞かれても、と続きそうな言葉。私はこの高野君に片思いしている。


やっと今年同じクラスになれて……席も近くになった。
でも、思い切って話しかけてもつれないし、一度も好かれてるなんて思ったことなんてない。

でも、今日は勇気を出したくて。
一年に一回のこの祭りで、高野君に想いを伝えられたらと思って、ここに来た。

「りんご飴ひとつください」

私が買っている間、高野君も待っていてくれた。
今、仲間たちは気を利かせて、別行動を取ってくれている。
うまくいけばそのまま解散、フラれたらまた合流する。か、ひっそりと一人で帰る。

「はいよっ。お嬢さんかわいいね!好きなの選んでって!」

お店のお兄さんに言われ、ちょっと照れながらも選ぼうとすると、横からにゅっと手が伸びてきた。

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