揺蕩う空へ魔法の句を
私、江戸時代へタイムスリップしちゃったみたいです
「遅刻しちゃうよ~!」

とある9月下旬のある日、私は急いでカバンをひったくるように掴み、パンを口に放り込んで玄関を飛び出す。

行儀は悪いけど、学校に間に合わなくから仕方ない!

そう思いながら角を曲がる。その時、誰かにぶつかって私は尻もちを着いた。これがアニメなら、イケメンにぶつかってその人が転校生だったという展開に。

しかし、現実は甘くない。私がぶつかったのは金髪の着物を着たおじさん。

イケメンだったら良かったのに!!

私は立ち上がっておじさんに「大丈夫ですか?」と問いかけた。

おじさんは「大丈夫です。ところでここは――あ、あなたは…」と私を見つめる。

次の瞬間、おじさんは煙に包まれる。そこに居たのは、金髪に赤目の黒い着物を着た男の子だった。男の子の頭に狐の耳が、腰あたりには狐の尻尾が。

「え、え!?」

私な驚いて男の子を見つめる。男の子は意地悪そうに笑うと、私の腕を掴んで走り出した。

次の瞬間、男の子と私は黒い穴に吸い込まれる。その穴から出た時、私は思わず目が輝いた。

「あなた、他の人と変わっていますね」

クスクスと男の子は笑った。私は遅刻していることを忘れ、ずっと周りを見渡し続ける。

「では、行きましょうか。源 色葉(みなもと しきは)さん?」

「ど、どうして私の名前を…?」

私は男の子をじっと見つめる。男の子は「全て向こうで話します。とりあえず行きましょう」と微笑んだ。

私は男の子の後をついて江戸の町へ入った。
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