ターフのカノジョ ~武里真愛編~
第1話  新たな人生の幕開け
まぶしい朝日が就寝している私の顔を刺す。
ベッドから起き上がり可愛い絵柄のカーテンのかかる窓際へ向かう。
今日も高台となっているこの部屋から外を眺める。

視界に入るこの眺め、鳥が飛び草原が広がる。

いつもの朝と同じだ。そして下を眺めると

「お?今日は二人いる・・・」

赤毛の馬にブラッシングしながら話しかけている女の子ともう一人黒髪のショートヘアの女の子が話しあっている姿が目に入った。

私はカーテンを開け部屋に戻る。

そして急いで着替える。

着替えの終わった私は部屋にある冷蔵庫からコーヒーを出し机に座る。

まったく変わらぬ毎日だな。そして私は毎朝こう言う。

「私は競馬が嫌いだ」

この一言を漏らす。これが毎朝の日課だ。そして一日が始まる。

コーヒーが飲み終わった後、部屋を出て下階へ向かう。

「よぉ!おはよー」


元気な茶ばつの女の子が声をかけてくる。

「ん?あぁ童夢か・・・」

「相変わらず不愛想な返事だなぁ~」

目の前にいる元気溌剌の女子は童夢志保。
意外と有名な女子高生だ。

我が校は他校と違い最近流行の競馬道を専攻している。そして目の前の童夢こそが学園のナンバー2である。

競馬道とは遥か昔から伝えられている武道の一つで鏑流馬や乗馬に適した馬や動物の能力を選定できるという能力を競うもので、
近年では国が認めたことがきっかけに学校の学部として数多くの学校が取り入れ始めている。
そう流行というものだ。

私には興味が無い・・・

競馬嫌いのこんな私がこの競馬道学部に在籍しているには理由がある。
それは我が校 お座敷学園 が私の学費と研究費を負担してくれているからだ。

もちろん一般の生徒からは学費を取っている。
私を特別扱いをしてくれているので悪い条件ではない。

学校の最上階フロアは私のような優遇された生徒が宿泊している寮となっている。
この学校は外観からは想像のできない新しいスタイルの学校だ。
不意を突いたこのような意外性のある所もこの学校に魅かれた理由の一つである。


一足先に童夢志保が教室に入り、私は志保に続いた。

金髪ツインドリルの髪を揺らす女子をクラスメイト達が囲って話をしている。
容姿端麗、成績優秀。
彼女こそが我が校の競馬道学部の最優等生であるプリムローズだ。

確か幼少期からイギリスと日本を行き来する英才教育で育てられた彼女はお嬢様中のお嬢様だ。


童夢とは犬猿の仲というよりライバルという関係だ。

ただ・・・おっと始まった・・・

童夢志保がプリムローズの前に立ち口を開く。

「プリム!トップロードステークスの出走権はあたしが頂くよ」

挑戦的な言葉がプリムに飛ぶ。
その挑戦状と受け取れる言葉にプリムはすかさず

「OK!Shiho 勝負デース!」

クラスメイト達から歓声が沸く。

その直後チャイムが鳴った。
私は席に座る。

彼女達のやり取りは日常茶飯事、夫婦漫才程度にしか私は感じない。

学園No.1を目指すことは良いことだ。
学生時代の青春というものか・・・

一生に一度の学生時代。悔いが残らないように過ごすことは必要だと思う。

しかし・・・私には興味のない事・・・


扉の開く音でクラスメイト達の視線が入り口に集まる。


二人の女生徒が教室に入ってきた。
そう、今朝草原で話をしていた二人だ。

黒髪ショートカットの三原雫とブラッシングをしていた飼育係兼調教師の卵である山口亜子だ。

遅刻は免れたようだ。
教室で話をすればいいものを・・・

私はいつもそのような否定的かつ効率優先な考えしかできない。

そんな私の趣味は研究と分析だ。

根暗な趣味と思われがちだがそうでは無いと思っている。

身体運動ではなく脳を使った事が私は好きだと言っておこう。
それが言い訳であり私の本心だ。

答えを求め極限まで突きすすむ。
私の青春はそれだ。


私は昨年競馬の分析ソフト「当てる君」というものを開発した。

競馬には複数の馬券種と呼ばれる買い方つまり馬の選び方がある。
その中でも一番簡単なのが複勝と呼ばれる馬券で、選んだ馬が3着までに入賞すれば的中となる初歩的な馬券だ。

しかしその初歩すらも的中させることが困難であるのが競馬である。


その困難な競馬で私は実績を残すことができた。

分析ソフトを開発し的中率70%という実績が学会で認められ私は特待生扱いをされるようになった。


データ計算式については教えられないが過去実績、枠番、馬場状況といった数々のデータを入力することにより、そのレースで最も有力つまり入賞率の高い馬を選定することが可能となる開発に成功した。
そしてプログラミングを行いデータベース化できたものを発表した。
その発表会の時こそが今までの人生で一番緊張し感動した時だった。


「武里真愛さん、競馬で高確率で予想できるソフトの開発に成功したというのは本当ですか?」

「どのようなソフトですか?」

マスコミに囲まれる私。

一時の沈黙の後、私は口を開いた。

「私は馬の能力及び競争条件を数値化し、計算式に当てはめることにより馬の能力をデータ化する研究をしました。その成果がこのソフトです。」

私の背後のスクリーンにソフトの映像が表示された。

「このようにデータを入力していくと計算式により数値が計算されます。この数値の一番高い馬が有力馬であるという研究内容です。」

マスコミは立て続けに質問をしてくる。
フラッシュの中、私はマスコミに回答が可能である限り解答した。

学会発表が終わり、会場を出ようとした私に一人の女性が話かけてくる。

「武里真愛さんですよね?会見を見ていました。」

私はその女性を上から下までじっくりと観察した。

スーツ姿で落ち着いた話し方。
教師では無さそうだ。

「私に何かようですか?」

不愛想な返事で返す。
それが私だ。

「あなたのソフトを買わせていただきたいわ。あなたに提示条件があるならば言って欲しいわ。」

真剣な眼差しで話をかけてくる。

「ごめんなさい申し遅れましたわ、私は株式会社OFMAの竹下真樹(たけした まき)です。アイドルユニットAlisaProject等を手掛けている会社の代表をしています。」

「え!」

私はあまりの驚きに動揺を隠せなかった。

企業からの交渉・・・
この学会で発表する私の研究内容に一早く目をつけて交渉に来たわけだ。

だが一般の会社ならば二つ返事でお断りするのであるが・・・即断できなかった。

「ソフトを買うというよりも当社の専属研究員もしくは契約社員になっていただけるのであればそちらでも構わないわ!」

専属研究員・・・スポンサー契約・・・

脳裏によぎる。

「もちろん今後あなたの研究にかかる費用も当方が負担いたしますわ。」

悪い話ではない。

「すいません。少し考えさせてください。」

精一杯の返事だ。これ以上は今は思考が回らない。

「そうね、すぐに返答を頂けるとは私も思っていませんので是非検討してみて頂戴。」

「わかりました。」

「ではこちらに返事を頂けると助かるわ。よろしくね、武里さん」

名刺を渡されると同時に急にフレンドリーな対応をされ我に返る。


その後研究室に戻った。
竹下社長か・・・童顔のイメージしか思い出せない。
企業は動くのが早い・・・
早くも研究成果に目をつけてきたと私は思った。

名刺の会社をインターネットで調べる。

株式会社OFMA・・・金融関連から芸能事務所、その他物販・・・

「手広くやってる会社だな。晴れ舞台のそんな会社と陰で生きる私とは無縁だな、断ろう。」

私はそう決意した。

翌日の昼休みに名刺の電話番号に電話をする。

「もしもし、武里といいます。竹下社長はおられますでしょうか?」

「お待ちください!」

すぐさま保留音が流れた。

しばらく待つと電話が繋がる。

「もしもーし!」

元気な声が聞こえてきた。

「竹下社長さんですか?」

「違うよ!おねーちゃん今外出中です。どのようなご用件ですか?」

おねーちゃん?

なんだこの会社は・・・というよりも妹が秘書なのか?対応が悪いな・・・

「学会でのお返事をしようと思い電話しました。」

「学会?ってことは真愛ちゃんだよね?話は聞いてるよ、すごいじゃん当てる君」

私の事が話題になっているという事が不思議であり、悪い気分ではなかった。

「真奈ちゃん賢いんだ!あたし三連単買うんだけどなかなか当てるの難しいよね!」

「三連単・・・的中は不可能に近い馬券ですよ」

三連単とは3頭の馬を選び1着、2着、3着と着順を固定しその通りの着順でないと的中とならない一番高度な馬券である。
高配当とは裏腹に的中は極めて難しい馬券である。
競馬の醍醐味である馬券種で高配当が人気のこの馬券を購入する人は少なくない。
夢の万馬券いや1000万馬券もこの馬券種から配当されている。
そう、ニュースでも聞かれたことがあるかと思うが100円で購入した馬券が何百いや何千倍にもなったというニュースを・・・

その馬券は私にとって興味深いものである。

乗せられてしまった・・・

「折角のお話ですがお断りさせていただこうと思い電話しました。」

私が切り出すと

「えー!!折角の話なのにもったいない。まぁ断るんなら直に話してみたら?夕方ならおねーちゃん返ってくると思うし。」

そう来たか・・・

「では夕方に電話しなおします。」

電話の向こうの相手は慌てた様子で

「あ、待ってよ!折角だしうちの会社おいでよ!名刺の住所でわかるじゃん」

偉く積極的だと思いつつ私はこう返事してしまった

「わかりました。予定空いていますのでお伺いいたします。」

発言の後、私は後悔をした。時間を無駄にしに行くのは合理的でない。

「OK、OK!あたしはさな。よろしくね☆」

そして電話を切られた。

電話の後、私は完全に乗せられたと思った。
あのさなって人話し上手だな・・・
どんな人なんだろう?

他人に興味を持たない私が少し興味を持っていることを自覚した。

夕方、名刺に書かれた住所に向かう。

「凄い・・・ビルなんだ・・・」

企業であり芸能事務所も持っているのであればこれぐらいビルであってもおかしくはない。
入り口前で見上げている私は声をかけられた。

聞き覚えのある声だ。

「MANA!ここで何してるデスカ?」

振り返ると一台の黒い高級車が止まっていた。
後部座席に座っていたのはプリムローズだ!

「あぁお嬢か・・・少し野暮用があってな、ここに来たのさ」

冷静に私は返答する。

「Oh!オーディション受けに来たのデスカ?応援しているデース」

プリムの言葉に驚いた。

「オーディション?」

プリムが入り口の方を指さしている。
私は振り返りプリムの指差す方向を見た。
入り口の看板だ。

[アイドルユニット新規メンバー募集 オーディション会場は3F♪]

再びプリムの顔を見ると真剣な眼差しで私を見ている。

私はため息とともに
「お嬢・・・私のどこにアイドル要素があるんだ」

プリムは窓から乗り出し気味で

「MANAはCOOLネ!頭も良いノデいい芸人になれるデース!」

・・・

私は硬直した。

「芸人・・・」

プリムは手を振りながら

「MANA頑張るネ!プリムは応援しているデース☆」

そう言葉を残し車は発進され小さくなっていく。

「芸人か・・・」

振り返り入口へと向かう。

受付嬢が話かけてきた。

「いらっしゃいませ。どちらへ御用でしょうか?」

品のある口調。さすが受付嬢といったところだ。

「竹下社長にご挨拶で伺いました」

受付嬢は内線電話を取り

「失礼ですがどちら様でしょうか?」

「武里です」

内線番号をダイヤルし受話器を耳に当てる受付嬢。
私はその仕草からも品を感じていた。

「社長、受付に武里さまがお越しになられております。いかがいたしましょう。」

電話の向こうに竹下社長がいる。
受話器を置き受付嬢は私を案内する。

「こちらのエレベーターより7Fへ上がってください。正面の部屋が社長室になっております。」

「ありがとうございます。」

私はエレベーターに乗り指定されたフロアへ向かう。

誘いを断りに来ただけなのにこの緊張感は・・・
いままで感じたことのない緊張感が体をよぎる。

7Fについた。

エレベータを降り、正面の扉をノックする。

「どうぞ!」

扉の向こうから声がした。
私は扉を開ける。

扉の向こうには綺麗に机が配置され、天井にはシャンデリアがぶら下がっていた。
しかし社長室であるはずなのに他にも女性が机に座っている。
オフィスのような感じである。

竹下社長が正面の机に座っている。

立ち上がった竹下社長は

「こんばんは武里さん。よくいらしてくださいましたね!
先日の答えをお持ちになったのですね。まぁ座ってください。」

社長の机の前に向かい合わせのソファーが配備されており、そのソファーに座る。
私は早速竹下社長に回答を伝えようと前かがみになり

「先日のお誘いなんですが、私なりに考えました結果・・・」

ここまではすんなりと言葉になった。

さぁ断っていいものなのか気持ちが揺らぐが私は断ると決めてきた。
今断りを入れる。

私が断りの言葉を発そうとしたとき後ろの席から

「お断りしまーす」

電話で聞いたあの声だ。
私は振り返った。
視界に入った赤髪の女性を凝視する。

自分で発する前に言われた。

「勝手に答えないでください!」

その直後竹下社長が声をあげる。

「さな!私たちの会話に入って来ないでちょうだい!」

あの
女性がさななんだ。

すぐさまさなは

「だっておねーちゃん、あたしは武里さんの持ってきた答えを知っているから代弁したの☆でしょ?武里さん!」

すました顔で話を進められる。

私は確かに断ろうと思いここへ来た。
でも私の意見でなく他人の意見で自分に関わる物事を決められるのは私の性格的に面白くない。

「武里さんの口から答えが聞きたかったな・・・私は。でもさなが代弁してくれたので間違いないようなのでそれでいいわね?」

竹下社長は私に直視しながら話しかけてくる。

勝手に答えられたのが納得いかず内心が煮えたぎる。
私の一番嫌なことをしてくれるなあの女。

「武里さん趣味は何かしら?」

さなを睨んでいたことを察して竹下社長が話しかけてくる。

「趣味ですか?私は研究が好きです」

竹下社長に返答する。


「研究というのは主にどの様な分野かしら?」

この人は私に興味があるのか質問をしてきた。
そこで私は我に返る

私が話をすべき相手はこの人であり、さなではない。

「特に分野は決めていませんがパソコンを使用して研究するスタイルを好んでいます」

その返答を聞いた竹下社長は表情を和らげ更に質問をしてくる。

「武里さん、株式投資はご存知かしら?」

「株式投資?」

思わず口にしてしまう。

「そう株式投資、企業の業績や経済状況そして今後の将来性等を考慮して投資を行うものよ」

経済状況や企業?
いきなりなんの事かと思えば女子高生に縁が有るような話ではない。
もちろんうっすらと聞いたことはある程度で興味などまったくない。

なぜその様な質問をされたのかその時私は理解できなかった。

「研究の好きな武里さんの力をお借りしたいわ。研究材料としても面白い分野だと思うわ」

竹下社長のその言葉に私は不信感しかなかった。

何が面白い分野で研究材料なのか
全く気持ちが入ってこない。


私の表情を汲み取るかのように竹下社長は説明を重ねてきた。

「武里さんには話の流れが解らないわよね?説明するわ」

私は一通り説明を聞いた。
半分半分だ

何が半分半分かというと研究内容は新分野であるので興味はある、ただ説明の為にTVにでるということは快諾出来ない。

人前でトークをするのは苦手だ、ましてやテレビ番組に出演するほど私はアクティブでもなければ有名になりたいとも思っていない。
影の存在でいい、研究結果は着目されたいが自分には着目しないでほしい。これが私の想いだ。

竹下社長は私に株式投資なるものの研究をさせ当てるくんの様に分析するソフトを開発させ、そのソフトを用いて番組製作をしたいというわけだ。
更に私をalisaprojectというアイドルグループに加入させ競馬番組にも参加させようという計画のようだ。

そのalisaprojectはかつてはガールズバンドグループであったが現在はsanaという名前で活動する私の気に入らない赤髪の女性と、ぬいぐるみの大好きなIMAIという女性の二人で現在は活動しているようだ。

sanaとIMAIは競馬ではそこそこ知名度のあるウマジョとよばれる競馬女子であることは解った。そこに競馬嫌いの私が参入することなど到底考えにくい。

「武里さん即答の必要は無いので考えてみてちょうだい」

竹下社長の問いかけに何故か

「はい、わかりました」

小さな声で返答してしまった。

また乗せられた。
断りにきたはずが再び期間を延ばしてしまった。

翌朝、いつもと変わらぬ流れでコーヒーを飲む。

テレビからはニュースが流れる。
普段はBGM程度にしか耳に入らぬ放送が私の気を引いた。



先日の日経平均株価終値はマイナス62円となり

「米国貿易摩擦が薄れつつも落ち込む展開となりました。」

ニュースキャスターのコメントに耳を傾けていた。

「株式投資か...」

一瞬脳裏をよぎる先日の会話。
新たな分野への挑戦。
一度考え出すと気になるのが人間というもの

「調べてみるか」

のんびりとし過ぎた私は急いで教室へ向い毎日と変わらぬ授業を受け、放課後私は株式投資について調べるため自分の部屋へ向かう。

廊下の途中で聞き覚えのある声に足を取られた。

図書室からだ。
私は少し開いている扉の隙間から中を覗く。

あの後ろ姿は童夢だ、もう一人机に座っている金髪の幼女は見たことが無い。
二人の会話に耳をすます。

「おまえ!B.O.K.Eデース」

聞き覚えのあるフレーズである。

「B.O.K.E?」

童夢が聞き直す。

「ボケデース」

幼女の言葉と同時に童夢が荒だった声をあげ

「誰がボケだよざけんなよ!」

全く童夢はあのような幼女の言葉を真に受けて荒ぶるとは熱い奴だな
だがそれが童夢志保だ。
そして私は自室へ向かう。

歩く廊下の途中で忘れ物に気づいた私は再び廊下を戻る。

まだ図書室で二人は話している。

「わわわ様よろしくおねがいします」

童夢の声が部屋中に響きわたっていた。

「わわわ様?」

私は小さな声で復唱した。
あの幼女の名前か?
まさか わわわ というのはアダ名であろう。
そのやり取りを耳に挟み私は再び教室へと向かう。

教室で私は机に忘れたタブレットを手にとり自室へ向かう。
何度この廊下を行き来しているのだ全く合理的ではない。

再び廊下を歩いていると童夢が図書室から出てこちらのほうに歩いてくる。

話しは終わったのか?
童夢は独り言を呟きながらニヤケタ顔で歩いて来る。

「わわわ様かぁ、こりゃ面白い連れが出来たなぁ」

独り言が十分聞き取れる程上呟く声は大きく上機嫌であった。

「よぉ!」

童夢はこちらに気付き声をかけてくる。

「童夢はわわわ様と仲良いのだな」

私からたまには会話を振ってみた。
すると童夢の返答は

「あぁ、わわわ様の下僕になっちまったしなぁ!ははは」

童夢は上機嫌で大笑いしている。

「そうか下僕か、ところでわわわ様はお嬢の妹か?」

童夢に質問してみた。
私から初めて童夢に問いかける質問がこれだ。

「だよ、名前はわかんないけど。」

童夢は平然と答えてくる。
すぐさま私は

「わわわだろ?」

わざとこの返しをしてみる。

「おぉ!武里もそんなノリできんだ!」

童夢は私の事をどうみているのか解らないが面白味の無い堅物人間と思っていたに違いない。
今の言葉からわかる。

「童夢、帰るぞ」

そう言い残し私は足を進めた。

図書室の前で飛び出してきた幼女と衝突する。

「No!おまえちゃんと前見るデース」

「わわわ様」

とっさに口ばしってしまった

「わわわじゃと」

一瞬幼女が怯んだ。
しかしすかさず幼女は

「なんじゃおまえ上級生か?」

なんという言葉遣い、あのプリムローズの妹とは思えないほどの品の無さと私は感じた。

しかしこの幼女どこかでみたことがある。
思い出せない。

幼女は私に
「お前、白のローブを着おってただ者ではあるまい。名はなんと申すのじゃ?」

「私か?私は武里だ。」

幼女は私の顔を覗き込み

「TAKEZATO?ふーん、覚えておいてやろう。meは下校timeが来たのでこれ以上お前の相手はできぬ。」

そう言い残すと幼女は急いで校舎エントランスへ走り去った。

「ん?」

私は足元に落ちていたハンカチを拾った。

チェリーローズと名の書かれたハンカチを手に取り。

「チェリーか・・・私も覚えておこう。」

自室に帰った私は株式投資についてネットで調べてみた。

なかなか興味深い研究材料でありそうな気持ちが私を掻き立てる。

「これも悪くないのでは・・・」

私から独り言が零れた。そして電話をかける。

「もしもし、期間限定でとりあえずやってみたいと思います。」

私はすぐに電話をしていた。

「はい、それではその条件でよろしくお願いいたします。」

こうして私のAlisaprojectとしての人生が開始された。

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