実験室の幽霊 〜真夜中の電話〜
佐藤さん

 下村さんはこれまでも時々非常退路を抜けて測定室へ来て、測定室の顕微鏡やスケールを借りたり、咲さんと雑談したりしていたらしい。僕が慌てていた理由について聞いた咲さんはクスクスと笑った。

「下村さんを幽霊だと思ったの?」
「すみません。失礼しました。」
「佐藤さんは良い人だから、大丈夫ですよ。」
下村さんが言った。
佐藤さんって誰?僕と咲さんは顔を見合わせた。

「佐藤さんって、もしかして亡くなった方の名前ですか?」
「そう聞いています。」
「え、面識があったんですか?」
それはおかしい。事故は20年前だ。


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