クールな専務は凄腕パティシエールを陥落する

覚悟は如何?

「愛菓さん」

5日後の日曜日。21時の30分前。

和生は゛favori crème pâtissière゛に現れた。

「まだ片付けが・・・」

「そう思って早めに来てみました。お手伝いします」

「い、いえ、結構です」

阿左美も白人も、今日は早番なので2時間前には帰宅していた。

フロアスタッフも急な用事があると言うので、商品の在庫が少なくなっていたし帰宅してもらっていた。

「後は片付けだけですね?」

「いえ、新作のアイデアが浮かんでいて、少し試作を・・・」

「愛菓さん」

ブリザードが吹き荒れようとも普段なら動揺しない愛菓だが、和生との約束をしてしまっているのは事実。

絶対的に愛菓の分が悪い。

「そ、うですね。片付けだけです」

シュークリームとプリンを買い求めに来ていた顧客は、ちらりと和生を見たが、その冷たい視線に驚いて、菓子箱を受けとると、そそくさと店を出ていった。

「営業妨害ですよ」

「ミレニアムプリンを五個」

「えっ?和生殿は甘いものは苦手では?」

「フロントへ差し入れです」

ああ、と口元を緩めて愛菓が菓子箱にミレニアムプリンを詰める。

「愛菓さんのプリンはとても好評ですよ」

「ご自分は食べられないのに?」

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