俺の、となりにいろ。
発見、愛しい女(秀人side)


「はあ?見つからない?タジマだぞ、タジマエミ」


俺は総務部人事課に配属になった同期に向かって、焦りを感じた。
伯父の経営する大企業、桐谷ハウジングに入社して二ヶ月。俺たち新入社員の配属先も決まり、本格的に仕事を覚えていく段階に入った。

数日前、人事課に配属になった同期の男に頼んでいた事があった。
そして今、その男と待ち合わせて外の定食屋で昼食をとっていた。

しかし、その返事は意外にも俺の予想していた内容ではなかった。
同期の男、江藤はミンチカツを頬張りながら、「だから」と繰り返して口をモグモグさせて飲み込んだ。

「だから、タジマエミだろ?社員名簿のデータを見たけど、そんな人はいなかったよ」
「結婚して苗字が変わった人とかは?」
「苗字が変わったらすぐに変更されて、データは上書きされる」
俺の質問に、江藤は「やれやれ」と言って頭を軽く振る。

「俺たちは社員の名前の検索は出来ても、ICコードの検索は出来ない。トラブル防止のため、係長以上の役職者の許可がないとICコードは触れない」
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