雨宮社長の専属秘書は気苦労が絶えません
5章 機嫌が悪くなった理由は……?

☆ 陽和目線で雨宮とのキスを思い出すシーン。
頬を抓られ、髪を撫でられ、薄目を開けた先、雨宮の顔がゆっくり近づいてきて……。

〇雨宮の自宅マンション・エレベーター(朝)

陽和「ちがーう!!」

エレベーターの壁に頭を打ち付け、記憶を追い出そうとする陽和。
あれはきっと夢に違いない、酔っぱらった見てしまった妄想だ。
だって、まさか雨宮社長が私にキスをするなんて――。

陽和「うん、そうだよね! 妄想だよ、妄想」

でも、待ってよ、妄想ってどういうこと?
それって、まるで私が雨宮社長をキスしたいって願ってるみたいじゃない。
いやいやいやいや、そんな願望なんてないし……!!

エレベーターが最上階に着く。
尚も頭を振りながら、廊下に足を踏み入れたところ。
雨宮の部屋のドアが開いている。
珍しくもう起きたのかと声を掛けようとして、陽和は息を飲む。
半開きになった玄関ドアから、雨宮と髪の長い女の人がキスしているのが見えたからだ。
固まる陽和に、女の人が気づく。
目が合って、思わず「あ、」と声が漏れた。
この前、伊藤さんがスマホで見せてくれたモデルのアンジュ。
雨宮の元カノだ。

アンジュ「あら?」
陽和「あっ……の、すみません」

咄嗟のことで、なぜだか謝ってしまう陽和。
そんな陽和を見て、アンジュは笑い声をあげた。
日本人離れした華やかな顔と、スーパーモデルの名に相応しいスタイル。それなのに、声は意外と可愛らしく、素顔は写真よりもずっと幼く見える。

アンジュ「変なところ見せちゃって、ごめんね」
陽和「いえ……」
アンジュ「瑛士のお知り合い?」
雨宮「秘書だ」
アンジュ「あぁ、そうなの! 可愛らしい秘書さんね」

雨宮社長もそうだけど、美形な人ってどうしてこうも顔圧がすごいんだろう。
陽和は深々とお辞儀をする。

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