大嫌い、だから恋人になる
私達は近くのカラオケボックスに移動した。

個室で二人きりだとやっぱり緊張する。

私は緊張を隠す為に大きな声で言った。

「ほら、秋山君歌って」

「先にちひろが歌えって」

「わかった。絶対だよ。私の後に歌ってね」

「わかってるって」

私は歌は下手でも上手でも無い。点数は七十点位。

「はい、次だよ。ちゃんと歌ってね」

「良いか、本当に笑うなよ。笑ったら怒るからな」

まあでも幾ら下手だって言っても、そこまで下手じゃないんだろうなって思った。
でも秋山君の歌を聞いてびっくりした。だって本当に下手だから。

わざと音程を外してるんじゃないかと思った。

ラップの部分なんてお経かと思った。

笑わない約束だけど私は思わず吹き出した。
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