強すぎる彼女と優しすぎる彼
全力で向き合う
「ずいぶん顔色よくなったわね。まだ痩せすぎくらいだけど」
「うん。これでも少し太ったんだから。今、司さんのところでゆっくりさせてもらってるし、仕事もこんなに休んだの初めて。」
佳子は桃とランチをしていた。桃は体調を崩していて司の部屋で寝泊まりしながら療養していた。少し前の妊娠疑惑はあくまで疑惑だったと本人からメールで聞いていたが心配だった佳子は、仕事の休みを利用して桃に会いに行った。
「あっ」
佳子が髪をかき上げた瞬間桃が声を上げる」
桃の目線は自分の左手の薬指にはめられた指輪にある。
「うん。決めたの」
「おめでとう!」
桃の言葉に佳子は照れ臭そうに笑った。
「なんか頑張るの疲れちゃって。彼について北海道に行ってからパートでもしようかなって。」
「そっか」
決断するまでの佳子の苦悩が自分とリンクして、桃はそれ以上何も言えなかった。
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