My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
 しかし「簡単」と言われてもそんな曲は勿論知るわけがない。
 そんな私の表情を見てか、彼は小さく笑った。

「その曲の楽譜は僕が持っている」
「え!?」

 思ってもみなかった、確かに「簡単」な答えに私は一気に拍子抜けする。
 でも、それがあれば帰れる!
 このわけのわからない世界から……状況から脱出できる!!

「お願いします! それ教えてください!!」
「うん。……でもね、条件があるんだ」

 笑顔で言われ思わずガクリと肩が落ちる。
 ……やはり、そう簡単にはいかないらしい。
 この綺麗な人の笑顔が、急に意地の悪いものに見えてきた。

 恐る恐る訊く。

「条件?」 
「僕の本体を助けてもらいたいんだ。今ある場所に幽閉されていてね。助けてくれたらこの楽譜をあげよう」
「そ、そんなの無理です! 私だって今こんな牢屋みたいなトコにいるのに、どうやって……」

 思わず大きな声が出てしまって慌てて抑える。外に聞こえたらマズイ。

「もうすぐ助けが来る」
「助けって!?」

(貴方が助けてくれるんじゃないの!?)

 心の中で叫ぶ。だが、その人はまたニコリと意味深に微笑むと、

「僕の名前はエルネスト。これからよろしく。君が来てくれるのを待っているよ……」

そう言い残し、スーっと消えてしまったのだった。
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