My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
「しんどう……?」
「聞いたことがある。白髪に赤眼……術士の中でも特殊な力を持った者」

 淡々と言葉を紡ぐラグ。
 私にはまたも何のことだかさっぱりだ。

「魔導術士とは違うの?」
「術士は万物の力を借りる。神導術士はその万物の声が聞こえる希少な術士、だな」

 最後はライゼちゃんに確認するようにラグは言った。
 だがやはり彼女はラグの目は見ようとせず、ただ頷いた。

「そんで、確か短命のはずだ」

 ラグのその無感情な声に、私は目を見開く。

(短命……?)

 髪と瞳以外はごく普通の、弟想いの少女。
 とてもその命が短いなんて思えない。
 表情を強張らせた私に、彼女はにっこりと微笑んだ。

「短命と言っても、30までは生きられます。私の母も神導術士でしたが、34まで生きましたから」

 歳相応のあどけない笑みを浮かべて言うライゼちゃん。
 でも私は言うべき言葉が見つからなかった。
 一拍置いて、ライゼちゃんの視線が初めてラグへと移る。
 その表情から笑顔が消えていた。

「貴方は魔導術士……ですね」
「あぁ。それも、ストレッタのな」

 唇の端をかすかに上げて言うラグ。
 それは挑戦的な笑みにも、自嘲的な笑みにも見えた。

(ラグ……?)

「そう、ですか……」

 なぜか苦しそうに睫を伏せるライゼちゃん。
 ――また出た、ストレッタの名。

「ラグ、ストレッタって何? 国の名前?」

 私は思い切って訊く。
 と、その答えは背後から返ってきた。

「ストレッタは、魔導術士の最高養成機関だ」

 セリーンの声。その鋭い視線は、ラグの背中に向けられていた。
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