My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1

 そのまだ幼さを残した顔をまっすぐに向けて、彼女が良く通る声で私を呼ぶ。

「カノンさん! ブライトに話をしようと思います。こちらに来ていただけますか?」
「うん、わかった! 今行くね!」

 私はそれに、笑顔で応えることが出来た。
 ――横からは、またしても大きな大きな溜息。
 そんなラグの横顔をちらりと見上げ私はふと思う。

(もしかして、叱咤してくれたのかな)

 だとしたらさっきの辛らつな言葉はわざとだろうか。
 いや、彼の場合本心からの言葉のような気もする。
 本当に冷たい人なのか、実は優しいのか……、まだ出会って間もない私には分からなかった。

 どちらにしても今、私は迷いが晴れてとてもスッキリとしていた。


< 170 / 280 >

この作品をシェア

pagetop