My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1

 ――最悪、皆殺しだ――

 セリーンのセリフが頭を過り、体に先ほどとはまた違う震えが走った。

「……じゃ何か? お前はあのままこいつに犯られてた方が良かったか」
「ち、違う! そういう意味じゃ……あ、そうだ! 助けてくれてありがとう!」

 慌ててラグに視線を戻しお礼を言う。
 でも彼は私の顔を見るなり、思いっきり眉を寄せた。

「っとに、お前は……」
「え?」

 再び大きく溜息を吐かれ、私は頭に疑問符を浮かべる。

「それ以上伝説から遠のいてどうすんだ」
「は?」

 言われていることの意味がわからない。
 ただ、彼の大きな手が急に私の頬に触れてきてびっくりする。





「な、なななな何!?」
「今治してやるから」

 嘆息混じりに言われて思い出す。先ほど顔面から転んで頬を擦り剥いたのだった。
 そして彼はその傷を瞬時に治す力を持っている。
 ……妙に意識して全身を強張らせた自分が恥ずかしい。

 だが、そこでハっと気付く。

「ちょっと待ってラグ、治さなくていい!」
「あ?」

 不機嫌そうに再び眉を寄せた彼の腕を取って、私は言う。

「他に治して欲しい子がいるの! 来て!」
「な、何言ってんだお前」
「いいから!」

 ――そうだ。ラグの治癒の術なら、クラール君を治す事が出来るかもしれない!

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