一人っ子なのに末っ子になりました
ヤバイ時間


「ねぇねぇ彼女〜横座って良〜い?」


約束の時間まで後5分というところで

やたら甘い声を出す男に目をつけられた


・・・目を合わしたら負け


先ずは慌てず騒がず自分にノルマを課した私を褒めよう

座った私の視界に入るのは
緩い喋りを生み出すキラキラベルト君

いや・・・
キラキラした物が沢山付いた
バックルのベルトをしている学生が正解か

んなことはどうでも良いけど

ハイカットのスニーカーの紐が片方解けかけだとか

チェックのパンツの右膝が少し擦れているとか

怪我しそうなトゲトゲ・・・違う
キラキラした物が付いたベルトは何処で買ったとか

キラキラベルト君を完全無視しながら
5分をやり過ごそうと考えていた

それなのに

嗚呼、それなのに

声を掛けてきた時に確かに聞いた
“横座って”のフレーズを

完璧忘れていた私を嘲笑うかのように
ヒラリと身体を回したキラキラベルト君は

三月の夕方、恐ろしく冷えた石のベンチの私の隣に隙間なく座った


・・・ちょっ


待てと言おうとしたのに
キラキラベルト君の緩い声が耳元で聞こえたことに驚いて固まってしまった


「無視はやめてね〜」


ゴクンと音を立てて唾液を飲み込んだ


「何、なに〜緊張してんの?」


「・・・っ」


固まってしまった幼気な中学生に
キラキラベルト君は肩を組むという
更なる試練を降りかけた





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