私の中におっさん(魔王)がいる。
第八章・それぞれの思惑。
 ランプの灯(ひ)が暖かく燈る部屋で、黒田はにやにやと顔をゆがめた。上司の異変に気づいた翼は、不思議そうな表情を作った。

「めずらしくご機嫌っすね。なにか良いことでも?」
「べっつにぃ!」

 答えた黒田はまた嬉しそうに笑う。
 そのようすを見て翼は得心がいった。

「ああ、なるほど、悪巧みでも成功したんすね」
「うるせーよ!」

 図星をさされたのか、黒田は途端に不機嫌になった。翼はいつものことだといったん黙る。
 再び訪れた静寂に、黒田はもう一度だけゆかいそうに笑った。

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