First Kiss

すばるくんと両想いだと分かってお付き合いを始めて3ヶ月半過ぎようとしてるところ。
………だけどすばるくんのお仕事の都合でなかなか会えない。忙しいって分かってるけど、やっぱり寂しい。
付き合ってからまだ手を繋いだことしかなくて。初めて手を繋いだ時の温もりがまだ私の手のひらに残ってる。
私は右の手のひらを見つめて寂しい気持ちにきゅーっと胸が押しつぶされそうになっていた。
付き合う前より今の方が断然好きな気持ちが大きくなっている。会えない日が続いていても、日が経つごとにどんどん大きくなっている。
画面越しに見るすばるくんの姿はやっぱりかっこよくて。
お仕事を真剣にしているすばるくんが彼氏でいてくれるのが夢なんじゃないかと思えるくらいキラキラしていて手が届かない所にいるみたい。

最後に会ったのは1か月前か。
メッセージは頻繁にやり取りしているし、たまに電話もするけれど、やっぱりすばるくんに直接会いたくなる。もっとスキンシップだってしたい。私だけこんなに気持ちが大きくなっているのかな。
だんだんと私の思考がネガティブになって行く。

そんな時だった。

ー「木村くん、そのピアスカッコイイね、いつもと違う雰囲気だね〜」

『そうでしょ?今年のお誕生日にもらったピアスでとっても気に入ってて大事にしてるんですよ〜!』

MCの人とすばるくんの会話が聞こえて

思わず目を見開いた。

すばるくんが付けてるピアスは、1か月前のすばるくんのお誕生日の時に私がプレゼントした赤いストーンが埋め込まれたピアスだった。

画面の中で嬉しそうに笑うすばるくんがいた。

大事に…してくれてる…

そう言ってくれたことで自然と涙が溢れてきた。

「…すばる…くん…会いたいよ…」

ひとりぼっちの部屋の中でつぶやいた。

✁┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

ー それから何時間が経過したのだろうか。

ふと目を覚ますとケータイを握りしめて寝ていたらしい。

…あれっ…?

毛布が1枚かけられていた。

私は確か何もかけずにいたはず…と不思議に思った。

そしてゆっくり上体を起こしてあたりを見回すとお風呂場の方から水の音が聞こえた。

ソファから立ち上がってお風呂場の方へ向かい

脱衣所のドアを開けると…

シャワーからあがったすばるくんが丁度出てきた所だった。

「わぁっ………えっ…あっ…」

わたしはびっくりして慌てて脱衣所のドアを閉めてしまった。

ど、どうして…ここに…すばるくんが………?

確かにすばるくんは私の家の合鍵を持っているけど…

でも今日はすばるくんが仕事だと分かっていたから

会う約束もしていない。

そんなことを思い脱衣所のドアの前で混乱していると…

ーガチャっ

『びっくりした…?』

ドアを開け、出てくると同時にすばるくんが言う。

「えっ…あっ…び、びっくりしたよ…どうしたの…?」

『どうしたって……菜々美が会いたいってメッセージ来たから会いに来た。1度起こしたんだけど起きる気配がなくてシャワー浴びてたんだ』

えっ?!私が?!メッセージ送った……?!

そんな記憶がなくて慌ててケータイを見た。

ロックを解除するとすぐにすばるくんのトーク画面が出てきた。

「 会いたい 」

そう一言だけ送っていた。

寝ぼけて送ったのか……全く記憶になくてびっくりした。

「あっ…ほんとだ…ご、ごめんね…疲れてるのに…」

『どうして謝るの?

会いたいって言ってくれたの嬉しかったし…

なんせ、俺も会いたかったから』

「えっ……?」

会いたいって思ってたの私だけじゃなかったんだ。

すばるくんの口から言ってくれたのが嬉しくて。

「ぴ、ピアスを…大事にしてくれてるって…言ってて…

それが嬉しくて…でもしばらく会えてなかったのが…

とっても寂しくて…」

涙とともに思っていたことが溢れてきた。

『そりゃ世界にたった一つの俺のために選んでくれた

プレゼントだから大事に決まってるじゃん』

その言葉で余計涙が溢れてきた。

すばるくんが持っていたタオルで涙を拭ってくれた。

『ごめん…俺が髪の毛拭いてたタオルで…』

「いいの……」

『ソファの方に行こうか』

そういってすばるくんは私の手を握ってソファの方へ

誘導してくれた。

2人でソファに横並びに座ると、

『菜々美、こっち向いて?』

すばるくんが私の頬を両手で挟んですばるくんの方へ向いた。

『俺も…ずっと会いたかったんだ…なかなか会いに来れなくてごめん。』

「ううん、疲れてるときはゆっくり休んで欲しかったから。謝らないで。」

『菜々美を好きな気持ちは全然変わらないし、ずっと続く限り大事にしたい。』

まっすぐ私を見つめてそう言ってくれた。

「わたしも…会えない日も好きって気持ちが増してくの…」

『ふふっ…かわいい…

…そうだ…俺たちまだ手を繋いだことしかないよね…』

そう言うとすばるくんが私の右手をぎゅっと握った。

お風呂から出たばかりだからか、とっても温かかった。

すばるくんの温もりと手を握る力が少し強くなったのが

とても愛おしくて、

「ハグ…してもいい…?」

そんなお願いをしてみた。

するとすばるくんは握っていた手を自分の方に引き寄せ

ぎゅっと私の体を包み込んでくれた。

洗いたての髪の毛から私のシャンプーの香りがほのかにして、

包み込んでくれる体が温かくて、

好きという気持ちがどんどん増していく。

心臓の鼓動が早くなっていくのも分かる。

しばらくぎゅっとしてくれたあと、

スっとすばるくんの体が離れていき、

鼻がくっつきそうな距離で

『可愛い。』

艶っぽい声ですばるくんがつぶやいた。

『ハグしたの…初めてだね。』

「そうだね…」

そんなぎこちない会話を交わし、

お互いの言葉が消えたのが合図のように

私たちの距離がゆっくりと近くなる。

キスまであと2センチ位の距離で

『好きだよ。』

すばるくんがつぶやく。

私の心臓がトクンと跳ねるのと同時に

私の唇にすばるくんの唇が触れた。

ゆっくりと唇が離れていき、見つめ合うと

『俺たちのファーストキスだね…』

「ん……」

ドキドキが止まらない私は言葉にならなかった。

『もっと…していい?』

その言葉の返事と同時にさっきよりも

もっと深いキスが落ちてきた。

お互いの唇の感触を味わうように。

もっと、私たちの夜は、長く深いものになった。

ー fin.

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