鬼課長の魔法の義足。(11/24修正完結済み)

そうしたら課長とロンさん達がスタートラインに現れた。
現れた途端、観客からたくさんの声援が飛び交った。
応援メッセージが書いた旗を広げる人もいた。
するとロンさんがサングラスを取り手を挙げた。
声援が飛び交う中で特に女性ファンから
たくさんの黄色い声援が飛んだ。

「キャアアッ~ロン様!!」

中には、ロン様コールが鳴り響いた。
相変わらず凄いモテモテだわ。
モデルもやっているし、これだけ美形なら
モテモテなのも頷ける。
しかも王者としての実力もあるし……期待も大きい。
誰もが認める実力者だ。でも、課長の応援だって凄い。
特に日本側の観客席からたくさんの
課長コールも負けずに飛び交った。

「日向選手。頑張れー!!」

大人から子供まで課長の名前を叫ぶ。
今回のパラリンピックは、日本の東京で
行われたため日本客も多い。
そのお陰で課長の期待も大きかった。

観客の声援に快く応え、余裕のあるロンさんと
違って課長は、真剣に前だけを見ていた。
緊張をしているのかな?と思ったが
生真面目で何事もストイックな課長のことだ。
集中をしているに違いない。

そう思っていたら合図の号砲が鳴った。
走り出す課長とロンさん達。やはり
先頭に立って出てきたのは、課長とロンさんだった。
お互いに最大のライバルと言っているだけあって
実力は、同じぐらいだ。

お互いに一歩も譲らず真っ直ぐ前を向いて走る。
そのフォームは、惚れ惚れするぐらい綺麗だった。
課長とロンさんは、義足なのにそうだと
思わせないぐらいに速く
羽が生えているみたいに軽やかに走っていた。

どちらも脚を切断したという過酷な経験をしたのにも
関わらず、それでも絶望から克服した。
私も怪我が原因で陸上を諦めてしまったけど
課長とロンさんは、それ以上に苦しかっただろう。
一体どれだけの悔し涙を流したのだろうか。

自分だったらきっと耐えられない。
全てに絶望して死にたくなっていただろう。
怪我でもあれだけ苦しかった……。
でも課長とロンさんは、その苦しさから乗り越えた。 
走ることも生きることも諦めなかった。
たくさん努力をして自分を奮い立たせてきた。
それは、きっと血の滲むような努力だったのだろう。

そんな2人が今、全力を出して走っているのだ。
自分の誇りと母国のために。
世界の障害を持っている人達に
勇気と希望を届けるために……。

すると50メートルに差し掛かったとき
一歩前に出てきたのは、ロンさんだった。
さすが『義足の世界絶対王者』と言われているだけは
あってその実力は、圧倒的だった。
また一歩前に出てきた。

このまま行くとロンさんが勝ってしまう。
課長が……負けてしまうのは嫌だ!!

「亮平さーん。頑張って下さーい!!
このまま負けてもいいのですかー!? 
やられたら倍返しにしてください。
それが鬼課長でしょう!?」

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