願い婚~幸せであるように~
願いはひとつ
週明けの月曜日、中野課長ともに『カヤシマ不動産』を訪れた。受付で挨拶をして、すみれが住宅事業部に内線をかけていると、背後からヒールの音が近付いてきた。

沢田さんが立ち上がり、会釈をした。甘いけど爽やかな香りが私の横から漂ってくる。チラリと目を向けると、私より少し年上と思われるきれいな女性が沢田さんと対面する。

背中の真ん中まである髪の毛先が軽くウェーブされていて、クリーム色の膝上丈のスカートから女性でも見惚れるくらいの美脚が伸びている。


「こんにちは、小橋さま」

「茅島部長はいらっしゃるかしら? 近くまで来たから挨拶しておこうと思ったのだけど」

「はい。今確認いたしますので、そちらにお掛けになって、少々お待ちください」


彼女は穏やかに微笑んで、指定されたロビーにある椅子へと向かう。歩き方もモデルみたいにきれいだ。

幸樹さんに会いに来たようだが、小橋という名前……先日うちに訊ねてきた人と同じ名前だけど、まさか同一人物?


「お待たせしました。茅島と加藤がお待ちしておりますので、どうぞお上がりください」

「はい、ありがとうございます。平原さん、行こう」


中野課長に頷いて、エレベーターに体を向けるがどうしてもあの人が気になる。ふとすみれを見ると、沢田さんと小声でなにかを話していた。
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