願い婚~幸せであるように~
対面した幸樹さんを頭からつま先まで眺めて、「大きくなったのね」と小さく息を吐く。

幸樹さんに促されて、着席する。私と母が並んで座り、向かい側に幸樹さん。


「まさか茅島さんちの幸樹くんと結婚するなんてね……」

「すみません。突然のことで……こちらからご挨拶もしないで、決めてしまいまして」

「確かに突然で驚いたけど、幸樹くんだったことにもっとビックリしたわ。ふたりが会ったのは偶然?」

「うん。でも、私は全然覚えていなくて」

「そうね、和花は覚えていないわよね。しかし、縁があるというか引き合うものなのかしらね」


おしぼりで手を拭きながら、昔を思い出したのかしみじみと言う。


「おばさんは覚えていますよね? 俺がどんなに和花を想っていたか」

「そうね。大事にしてくれているとは感じていたけど、結婚を考えるほどの強い想いだとは思わなかった。だってね、和花もだけど、幸樹くんも子供だったもの」


きっと幸樹さんは子供ながらも真剣に考えていてくれたのに違いない。だからなのか、子供だったと言われて、眉をピクッと動かした。

子供の気持ちを侮るなとでも言いたげに。

母は幸樹くんなら……と前置きしてから、ふたりが納得して決めたのなら、これからも仲良くしなさいと了承してくれて、和やかな食事に終わった。
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