「ねぇ、シェアしない?」
「それでなにする気?」
舞香が言う『それ』とは、私が握りしめている出刃包丁だ。
血でぬめっていて、意識していないと取り落としそうになる。
これで、耳を削ぎ落としたのかもしれない。
目玉をえぐりだしたのかもしれない。
これで体を真っ二つに__。
「うるさい!」
それは、舞香に向けてでもあり、頭の中にわいてくるグロいイメージを蹴散らすためでもあり。
「とにかくもう、好き勝手にはさせない!」
「夏美を殺しておいて、私まで殺す気なの?」
「それは__」
「優子が余計なことを言わなければ、夏美はいじめられることはなかった。その代わり、彩音が自殺してたかもしれないけど」
ぎろっと、彩音を睨む。
「彩音はなにも悪くない!悪いのは__私。確かにあの時は、先のことをなにも考えてなかった。まさか夏美が自殺するなんて、思わなかった」
「でも、私の可愛い妹は死んだの。悪いと思うなら、私に包丁を向けるんじゃなく、それで自分の首をかっ切ったらどう?」
「えっ⁉︎」
「口でならいくらでも言える。本当に心からそう思うなら、態度で示しなさいよ」
「それは__」
「ほら、やっぱり口先だけじゃない。どうせ心にもないことを言って助かる気なんでしょ?」
舞香が、私のことを睨みつける。
大切なひとを失って、復讐にかられてきた舞香。
その気持ち、私にならわかる。
だって、私と舞香は__。