何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
———— 次の日

天音は今日もいつもと変わらぬ様子で、授業を受けていた。昨日のあの兵士との話は、まるでなかったかのように。

今は歴史の授業中。
天音や妃候補達は士導長の話に耳を傾けていた。

「昔は、女性はいろいろな差別を受けてきたと言われている。そのために、命を落とした女性もたくさんいるそうだ。」
「え…。」

天音は士導長が口にしたその言葉に衝撃を受け、思わず言葉をもらした。

「迫害にあった女性は、子供も満足に育てられなかった。そんな時代もあった。今この城下町は、平和で栄えている町だが、しかし、この国はそう言った場所だけではない。この国には貧しい町や村が沢山あり、不満を抱えている人々は確実にいる。」

「不満…。」

天音の村は貧しかったが、不満を感じた事は一度もなかった。
そう、今までは、不満を持っている人がこの国のどこかにいるなんて事も、考えた事はなかった。
村の外に出るまでは…。

「その不満が大きくなり、反乱は起こる。よいか、妃たるもの、全てを見なければならぬ。国を見なければならぬぞ。」

士導長の厳しい言葉を、妃候補達は真剣に聞き入っていた。

「それが出来なければ、妃になる事はできない。」

さらに士導長は、厳しい目を妃候補達に向けた。
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