何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】

伝えられぬ言葉、受け継がれる思い


その日城下町では、誰が作ったのかわからない号外と書かれた紙が、町の見回りをしている兵士の目を盗んで、配られていた。

その号外の内容は、この町にも反乱軍が攻め込んで来るという、なんとも物騒なものだった。

国に反発し続ける者達を反乱者と国は呼び、その数は各地で徐々に増え始めていた。そんな彼らが、今では自らの事を反乱軍と名乗っており、彼らはこの国の変革を望んでいた。
そんな彼らは、少しづつ勢力を増して、この国を脅かす存在となりつつあった。

「へー、天師教のお膝元にも、反乱軍が来るって事かいな。もしこれで国が反乱軍に負けたりでもしたら…。」

りんもその号外を手に取って、そんな不吉なことをブツブツつぶやきながら、町を歩いていた。

「それも、面白いわね。」
「…また、どっからともなく現れたなー。」

すると、またも神出鬼没なかずさが、いつの間にかりんの後ろにいて、同じようにその号外を手に取っていた。
しかしりんは、もう慣れっこだ。今では、どこからかずさが現れようと、驚かなくなった。
彼女が何のために町にひょっこり現れるのかは、わからずじまいではあったが…。

「あなたは、どっちがいいと思う?このままか、それとも…。」
「わいが決めるんか?」

りんのその鋭い視線が、かずさを捕らえた。
しかし、かずさもまた、その視線から逃れるような事はせずに、ゆっくりと彼の方へと視線を向けた。

「それを決めんのは…。」

ゆっくりと口を開いたりんは、今度はかずさから視線を外した。


「時代や。」


りんはそう力強く答え、城の方へと視線を移した。

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