何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】

運命の知らせを手にした少女

「じぃちゃん!!」

この地球国の中の、小さな小さな村に一人の少女の叫び声がこだました。
その村は緑が多く、小高い丘からは小さい村が見渡せる。
この村は本当に小さく貧しいが、人々は時給自足の生活を送り、自然豊かな村だった。

「おー天音(アマネ)。」

じいちゃんと呼ばれた老人が、のんびりとした声で彼女の名前を呼び、いつも通りの笑顔をこちらへ向けた。

「おー、じゃないでしょ!!」

しかし、そんな笑顔をも吹き飛ばしてしまうくらいの大声を上げた彼女は、仁王立ちで老人の前に立ちはだかる。しかし、今日もその老人はいつも通り畑仕事をしようと、家の外に出ただけだったため、キョトンとした顔を彼女に向けるばかり。

「何がじゃ?」

さらに、昨日の出来事もまるで忘れたかのように、じいちゃんはとぼけるように、首を傾げた。

「もー、昨日倒れたの忘れたの!」

そんなじいちゃんを見て、少女は呆れ顔で叫んだ。
なぜならじいちゃんは昨日、畑仕事の最中に転倒して腰を打っていた。天音が近くに居たため、すぐにじいちゃんをベッドへと運び、大事には至らなかった。本当はちゃんと医者に見せた方がよいのだろうが、この村には医者が居ない。それにじいちゃんは、「大丈夫。寝ていれば治る。」と言うばかりで、医者に行くという気は微塵もないらしい。
そんな昨日の今日で、また畑仕事をしようとしているじいちゃんを見て、彼女は気が気でないのは、当たり前。

「もう大丈夫じゃ。昨日はちょっと、足が滑っただけだ。腰だって今は何ともないし…。」

彼女をなんとかなだめようと、じいちゃんはそんな事を口にし、畑仕事をする気マンマンだった。

「大丈夫じゃないでしょ!!年なんだから。」

そんな聞き分けのないじぃちゃんに、彼女は顔を赤くして、お説教を続ける。
こんなに心配してるのに、じいちゃんには全く響いていないようだ。

「でもなー、こいつら(野菜達)の事が心配で…。」

しかし、じいちゃんも彼女に怒られ続け、だんだんと声が小さくなっていく。
まるで、母親に怒られている子供のようだ。

そんなじいちゃんは本当に畑仕事が大好きで、朝から晩までの時間のほとんどを、畑仕事に費やしていた。それは彼女もよくわかっていた。
しかし、じいちゃんももういい年。体力的にも今まで通りにいかないのは当たり前だ。
だからもっと体を大事にして欲しい。それが彼女の願いだった。
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