恋の駆け引き~イケメンDr.は新人秘書を手放せない~
近すぎて、見えない物。

SIDE真之介 親友、井川武広

並木と2人、会社を休んだ。
不満そうにしていた彼女も、最後には笑顔を見せてくれた。

楽しかった。
自分のストレス発散に付き合わせて申し訳ないと思いながら、それでも楽しかった。

「副院長。今日のスケジュールです」
「ああ」

何もなかったように、仕事をする俺の秘書。

「ちゃんと寝られたか?」
「え、ええ」
答えながら、顔を赤くする。

昨日マンションに帰る車の中で、俺たちは手をつないだ。
そして、登山に疲れた彼女は、途中で眠ってしまった。
マンションに着いた俺は、起こそうとしてやめた。
そのまま抱きかかえると、寝室へと運んだ。


「おやすみ」
無防備で寝る彼女に声をかけ、そして眠った。

朝まで、手をつないだまま。

30も過ぎたいい大人が何をしているんだとも思う。
けれど、その手を離したくなかった。
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