それは線香花火のような
素直じゃない君


 夏の夜空に大輪の花が咲くと、熱心に見上げている人々はその鮮やかな光を見て歓声をあげた。数秒遅れてどーん、と海岸線から打ち上げ花火が上がる音が聞こえる。

 つくづく、「彼女」は線香花火のようだった。今は誰もが大輪の花火に心焦がれて見上げている。じりじりと地面の近くで小さく火花を散らす線香花火など、今は誰も必要としない、見向きもしない。その目元に光る涙など、僕以外は誰も知らないのだから。

 夏の夜に不規則に瞬き、刹那の輝きを放って儚く散りゆく、そんな短命の線香花火を愛しているのは、きっと今はこの世で僕だけではないだろうか。






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