追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
第二章
◇sideカーゴ◇
朝からずっと、そぼ降る雨を窓越しに眺めていた。
……ん、雨足が弱まってきたか?
ふと気付き、朝から温めていた特大のクッションを立ちあがって窓辺に寄った。見上げれば、雲の切れ間から薄く西日が射しこんでいた。
期待に、耳と尾っぽがむずむずした。そうすればムズ痒さに付随するように、窓に映る体長四メートルにもなる真っ白な猛虎も、ピクピクと耳を揺らしパタンパタンと尾っぽを振った。
……これならば、じきに止むな。
俺は焦れる思いで雨が上がるのを待った。
雨はいつも、俺に不自由を強いる。しかし俺は、雨自体を嫌ってはいなかった。少なくとも一年前までは……。
けれど今は、雨雲を見るに落胆が隠せない。……雨の日は、アイリーンに会えないからだ。
俺の未来を懸け、なんとか父から勝ち取った学園生活。二年制の学園でアイリーンと共に学ぶ限られた時間、一日たりと無駄にしたくなかった。
だがアイリーンは、俺がこんなにも心焦がしているなどと知る由もないだろう。
俺は灰色と茜色が混ざり合う夕刻の空を見上げながら、アイリーンに初めて出会ったあの日に心を飛ばした――。