サヨナラのために


「…え?」


誠也の温かい手が、私の両手をギュッと握る。


「怖かったんだろ、言い返したとき。手が、冷たい。」


全身の緊張が緩む。


「佐々木が悪く言われないように、わざと強く言ったんだろ。…ほんと、バカだな、美羽は」


いつもみたいに優しく笑う誠也に、胸が締め付けられる。


違う。違うよ。


私は、誠也が思ってるほどいい子じゃない。


佐々木さんに、最低なこと思っちゃったんだよ。


申し訳なくて、罪悪感で、助けただけなの。


優しさなんかじゃない。



私は、卑怯で、醜いの。



涙が出そうになって、誠也の肩に顔を押し付ける。


「美羽?大丈夫?怖くなった?」


優しく背中を撫でる誠也の手が、ものすごく熱く感じる。





怖かった。


汚い自分が、誠也にバレてしまうことが。


他の全員に嫌われることよりも、嫌だった。


この人だけには、嫌われたくない。


そう、思ってしまった。



諦めようって思えば思うほど、好きの気持ちが膨らんでしまう。





ねえ、誠也。


私は、妹なんかじゃないよ。



家族なんかじゃない。



出会ったあの日からずっと、あなたに、恋してるんだよ。




ねえ、誠也。




お願いだから、こんな風に、優しくしないで。


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