身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
琴音と可乃子~閑side
【閑side】


 当時まだ子供だった閑の目にも、染谷の家は少し特殊に見えていた。昔の長子相続の意識が強く残っているためだったのだろうと、大人になってから少し理解した。

 毎年、夏の間の数日を一緒に過ごすだけの閑にも見ていて察することができたほどだ。妹の琴音は、常日頃それを肌で感じていただろう。

 両親が関心を示し、褒めそやすのは姉の可乃子。話題の中で常に上るのも可乃子の話題が中心だ。

 小さな子供だった琴音は、きっと寂しかったのだろう。だから、閑が少し優しくすれば頬を染めて、それはそれは嬉しそうな表情を浮かべた。

『だめよ! 琴音はまだ小さいんだから、川は危ないってば。お母さんに怒られるから戻って!』

 川遊びをしたいという可乃子を、敷地内にある砂利の川瀬に案内しようとした。その後をとことこと着いて来ようとする琴音。確か、幼稚園ぐらいの年齢だっただろうか。

『やだ、見てるから一緒に行く!』

 可乃子に諭されても、涙目でぎゅっとスカートの裾を握っていた。


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