身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
蜜月とはいうけれど
◇◆◇◆◇


 結婚式から一か月半。梅雨の季節が過ぎ去り、過酷な日射しと気温に日々悩まされている。
 といっても、琴音は仕事があるわけでもなく、出かけるといえば毎日の食料品の買い物と、料理教室くらいだ。

 専業主婦というのは、なんて時間がたくさんあるのだろう。これまでブラックもどきの会社で飼いならされていたから余計に、琴音にはそう思えてしまう。

 義実家が近いので義母である優子が、頻繁に琴音に会いに来たがるが、どうやら閑が裏で何か言っているようでそれほど強行はしてこない。

 ひと月の間で二度ほどあったが、新婚旅行の土産を渡して、後はふたりでお茶会のようなものだった。嫌味を言われるわけでもないし、何も苦痛はない。

 ただ、ちょっと気になるのは。琴音の妊娠……つまり孫への期待が強すぎることだろうか。

「えーっ! 待ってくださいよ、だって式からまだそんな経ってないじゃないですか?」

 退職してから初めて、個人的な友人と今夜は居酒屋に来ている。
 勤めていた会社の後輩、三輪だ。聞けばあれからオフィスの就業状態は随分改善されたらしい。人手も入り、無理な納期の契約も無くなって、こうして仕事の後に会う余裕も出来てきたそう。

「直接には言われないけど。体調は大丈夫? とか言われるたびに、何か期待のオーラを感じるの、多分気のせいではないと思う」
「う、わあ……結婚って、大変ですね」
「子供ってどれくらいで出来るのかなあ?」

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