身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
きっと、好きになる
◇◆◇◆◇


 閑が改めて迎えの時間を電話で連絡してきたのは、翌日のことだった。

『午後二時からの予定だから、どこかで食事してから行くか』

 そういう彼に、琴音は一瞬同意しかけて、やめた。

「食事はいい。待ち合わせを一時にして、そのまま行こう?」
『そうか? 食事がてら少し、式やその後の打ち合わせもしたいんだが』
「じゃあ、それは試着の後で……閑さんの時間が大丈夫なら」

 試着の後ならちょっとくらい食べても大丈夫だろう。
 琴音にもやはり乙女心というものがあったりする。おそらくは一生に一度の機会、ドレスを着るのなら少しでも綺麗に着こなしたい。

 それには、たとえまだ試着段階とはいえ、少し空腹なくらいでちょうどいい。
 電話をしながら、無意識に腹を撫でさする。胸もそれほどないのに、腹がぷっくり膨れては、ましてやそんな姿を閑に見られたくはない。
 ほんの少しでも、綺麗に閑の目に映りたい。

『わかった。それじゃあ夕食を一緒に』

 電話を切って肩の力を抜いてから、はたと気が付いた。
 ドレスの試着後、ふたりで食事。よくよく考えなくとも、これがふたりの初デートになるのだろうか。

 考えただけで早々に緊張して眠れなくなりそうで、琴音は敢えて何も考えないようにしてベッドに潜り込んだ。
 何日も前から緊張していたのでは、とてもじゃないが身が持ちそうにない。


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