溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
10話「欲しいもの」





   10話「欲しいもの」



 左の薬指でキラキラと光る指輪。
 ずっと憧れていた結婚指輪。

 少し前までは違う人との未来を想像していたはずなのに、今は違う人と共にいる。
 それがちょっとした出会いから始まり、その人との約束で今までとは全く違う生活がスタートしたのだ。
 
 それを実感させてくれる1つがこの結婚指輪だった。
 同じくデザインのものを、相手である椋が毎日身に付けてくれる。男らしく大きい手。そして、少しゴツゴツしているけれど、長細い指につけられている結婚指輪。それを見ているだけで、花霞は嬉しくなってしまう。
 最近、それを椋に見つかってしまい、「何だか見つめられてる俺が照れちゃう。」と、頬を染めて笑われてしまった。


 そんな椋と結婚してから、もう少しで1ヶ月が経とうとしていた。

 彼との暮らしで、花霞はとても充実した生活をしていた。けれど、余裕があるからこそ彼の事を見れるようになってきたため、気になる事も増えてきた。

 1つは、彼がほとんど寝ていないという事だった。いつも同じベットで横になり、2人で一緒に寝る。けれど、彼の寝顔を花霞はほとんど見たことがなかった。花霞は1度寝ると、夜中に起きることがあまりないが、何度か起きると彼は隣にはいなかった。不思議に思って彼を待っていたがなかなか寝室には帰ってこない。そのため、花霞は家の中を探した。リビングやキッチン、そしてトイレは使用中になっておらず、花霞の部屋にももちろん椋が居るはずもなかった。残るは椋の書斎のみ。ドアはきっちり閉まっており、中の様子はわからない。けれど、時々カタカタとキーボードを叩く音が聞こえてきたため、きっと彼は部屋に居るのだと花霞は思った。



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