【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。

一カ月の彼氏


藍田胡桃 SIDE*





どうしよう……。

灰野くんと話せた。

それもあんなにたくさん……!しかも自然に。



中1の冬に付き合って、いつの間にか別れて……それからずっと無視されていたのに。


なんで突然、喋れるようになったんだっけ。


びしょぬれのプリントを四つに畳んだ。


汚そうにプリントの端をつまんでいた灰野くん。あの、険しい顔。


中学生の頃、その表情を頻繁に見て、別れたんだっていい加減確信したんだ。




―――灰野くん、どうしてにらむの?


何度も聞こうと思って、結局聞けずじまいだったけど、聞いちゃえばよかったな。こんなにずっと、もやもやしているくらいなら。


「はぁー……」


でも灰野くんの前に立つと、しっかり膨らませてパンパンになったはずの勇気が、一気に萎んじゃうんだもん。ぷしゅーって。


いつしか「おはよう」さえ、言う勇気がなくなった。


そういうのを、意気地なしって呼ぶ。

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