【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。

あたしはあなたの、


藍田胡桃SIDE*




灰野くんの手のひらの感触と、真っ赤に染まった顔を思い出してはうっとりとため息がでちゃう。


登校中の朝。
眩しい日差しが降り注ぐ並木の坂道を上りきった。


木陰は微かに涼しいけど、そもそも空気が夏過ぎて、暑い。


鞄からタオルを取り出して汗を拭いていると、「胡桃ー」って後ろから声が聞こえた。


この声はナギちゃんだって確信しながら振り返る。


「おはよう」


キキっとナギちゃんの自転車が隣で止まった。


「乗ってく?」


あ、救世主だ。


「乗る乗る!」


あたしは遠慮なく、乗り馴れたナギちゃんの後ろに跨る。



少し進むと、自転車が風を切って下り道を抜けていく。


あたしは足を放り出して、涼しさに目を細めた。


「あーーーすずしぃ……」


「プ、何その顔」


「あぶないよ、前みて前!」


「はいはい。なんかリラックスしてて可愛かったよ、今の顔」


「ありがと」


ナギちゃんは「可愛い」を使うハードルが低い。それも罪深い一つの要因だと思う。



「昨日、灰野となんかあったの?あいつのロケットダッシュひさびさに見た」



「そうなの!聞いてくれる?」


当たり前、みたいに頷くのを見て、あたしは声を弾ませる。

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