琥珀の中の一等星
コンプレックス
「うーん……これは少し似合わないかしら」
 ライラが試着した服とその姿を見て、ライラの母は芳しくない、という顔をした。
 今日は洋服店に来ていた。それも少し良い店である。友達と、ミアやシャウラたちなどと行って、普段着にする洋服を見たて合って、きゃぁきゃぁ騒ぐ店よりも良い店。
 それもそのはず、今度参列する結婚式に着るドレスを買うのだから。
 今度、ライラにとっての従姉妹が結婚するのだ。ライラの父の兄の、その娘。もう立派な大人で、お年頃。適齢期といえるのでいちばん良いタイミングでの結婚だ。
 今日買いに来たドレスを選びに行くと言い出したのは、母。当然だろう、適当な服など親類たちに見せられないであろうから。
 おまけに母方ではなく父方、つまり母にとっては直接、血が繋がっていない親類なので余計に気を使うのだろうな、とまだ子どもの部類に入れられてもおかしくない歳であるライラにもそのくらいはわかった。
 いくつかドレスを手に取って、「着てみなさい」と言われたのだけど。
 最初に試着したものはあまり良い反応をされなかった。
 髪が水色なので、やはりこういう正式なドレスといえるような服は、子どもの頃から青系を選ばれることが多かった。藍や青紫が良く似合うのだ。
 もしくは落ち着いた暗いトーンならばピンク系も悪くはない。あかるいピンク色だと髪色が薄いために、全体的にぼやけたような色合いになってしまうのだけど。
 それはともかく、ちゃんと自身に似合うと把握していた濃い青のドレスを最初に選んで試着したのだが、それには良い反応がなかったというわけ。
 ドレスはとてもかわいい。色は似合うと思う。
 けれど、どうやら体型に合っていないようだ。Vネックで、ウエストはリボンで結んで、スカートはふんわり。とてもかわいらしい、のに。Vネックになっている、胸のあたりがちょっとこころもとない。
 ライラは胸にあまりボリュームのあるほうではなかった。というか、はっきり言ってしまえば胸が小さい。しっかりと膨らみはあっても、豊満とは到底言い難かった。
 今、着てみたドレスは襟元が割合あいているのですかすかして見えてしまうのだ。母もそこが気になったのだろう。
 きっと、胸が豊かであったらとても似合っただろうに。ライラは少ししょぼんとしてしまう。胸についてはコンプレックスであったために。子どもの頃は体型を気にしたことなどなかったのに、大人になって体の女性らしさが増していくうちに、そこが気になるようになっていった。
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