「ちょっと佐野(さの)! あんた、道具の清掃をまだ終わらせてなかったの⁉︎」

 江理奈(えりな)は、先輩の言葉にびくっと身体を震わせた。

「すみません」

「返事が違うでしょ!」

 江理奈が謝罪するや否や、先輩の怒鳴り声と一緒にブラシが飛んできた。
 それを避けると次は何が飛んでくるかわからない。
 江理奈はそのまま立ちつくし、腕にブラシがぶつかる痛みを堪えて頭を下げた。

「申し訳ございません!」

 ブラシを投げた先輩は「このグズ! 役に立たないならもう辞めちゃいな!」と口を歪めて言い捨て、部屋から出て行った。
 
 ひとりになった江理奈はブラシを拾って「……良かった、壊れてないや」と殺菌シートでそれを拭く。破損したら江理奈の責任になり、代金が給料から引かれてしまうのだ。