エリナが機転を利かせて発行した食券は、作って正解だった。
 札の分だけ料理があるということで、料理を食べ損なったことが早くわかった客たちは、納得して『青弓亭』から去り、他の店へと夕飯を取りに行ってくれたのだ。

 日本と違って行儀良く列を作って待つ習慣のないスカイヴェン国の者たちだ。並んだ挙げ句「はい、ここまでです」などと言われたら、日本人の10倍は気を悪くしてしまうだろう。

 しかも、王都では顔の知れた警備隊長が食券を配り、「今夜は以上だ! 速やかに解散!」と高らかに宣言したとあっては、ごねる者などいないのだが。

「あら、隊長さん、もう売り切れちゃったのかしら? 残念だわ、昨日とても美味しかったから、今夜も食べたかったのに」

 唯一解散に軽く抗議したのは、昨夜カツレツ定食を食べた犬族の若い女性だ。

「可愛い子猫の料理人さんによろしくね、また寄らせてもらうわ」

「そうか。エリナに伝えておこう」

「あと、これもよろしく。あの子にあげてちょうだい」

 優しそうな女性は、小さな紙袋に入った焼き菓子をルディに預けると、手を振って人混みに消えた。