「ねえ、ルディさん。あ、どうぞ」

 その日の夕食も大盛況で売り切れて、店じまいをした『青弓亭』からいつものように抱っこをされて家に帰って来たエリナは、寝る支度を整えると、揃えてもらったお茶セットで2人分のハーブティーを淹れてからルディに尋ねた。

「ありがとう。なんだ?」

 エリナの淹れた香り高いハーブのお茶を飲みながら、ルディは尻尾を振って答えた。

「ルディさんは、偉い人だったんですか?」

 いくら身分制度に疎いエリナでも、王太子だ王家だという言葉が耳に入ったら『おや?』と思ったのである。だが、2人きりになった時に聞いた方が良いと判断して、『青弓亭』ではさらっと流していた。

 エリナの疑問に、ルディは「偉いというか、俺は特殊な家に生まれた、ということだ」と落ち着いて答えた。

「祖父殿のギルバートは前国王で、俺の双子の弟であるフランセスは王太子だ。つまり、俺の父親はスカイヴェン国の国王で、俺はこの国の第一王子ということになる」

「ルディさんは王子さまだったんですか。わたし、全然知りませんでした」

「そうか。警備隊員も王都の人間も、俺のことは警備隊長だと認識しているからな。ちなみに、王族や貴族が騎士団に所属するのは珍しいことではないぞ。黒豹のヴォラットは俺の幼馴染みで貴族だし、狐のサファンと熊のアルデルンも貴族の三男だか四男だかだな。ヴォラットは宰相の息子でもある」

 どうやら、スカイヴェン国王都警備隊は、貴族のエリートが多いようだ。