翌朝も、エリナとルディはいつものように『青弓亭』に行った。今は夜の経営だけで充分店を続けていけるのだが、美味しい朝ごはんを廃止しないで欲しいという警備隊員の要望で、朝食の提供は続けているのだ。

「今朝は、たくさんお客さんが来そうですね」

「全部の隊員が来かねないからね、仕込みは多めにしておこうよ」

 エリナとミメットは、せっせと朝食の準備をした。そんなふたりの様子を「これは驚いたね! 手際がいいなあ」などと呑気に眺めているのはギギリクだ。ミメットに手出し無用と言われたため、ルディと一緒にテーブルについて待っている。

「ミメットもやればできるんだな。さすがは俺の妹だ」

 感心する山猫に、ルディは(エリナが来る前に俺たちがどんな朝食を食べていたのか、こいつの口に突っ込んで教えてやりたい)と心の中で呟いた。

「隊長、留守の間は世話になりました」

「おう。どうだ、旅の成果は?」

「はい、いろんな食材や料理に出逢えました。特に、香辛料は良い物が手に入りましてね」

 ギギリクは、保管庫に向かうと、袋を持って戻ってきた。

「薬にもなる香辛料を使って、健康に良い料理を作っている国もあったんですよ。ほら、これなど、独特の香りがして鮮やかな黄色でしょう? その国では、こんな風に混ぜ合わせた粉を作って、シチューに入れるんです」

 ギギリクは香辛料の塊と、配合された粉をルディに見せた。

「ううん、俺にはよくわからんな」

「俺ももっと勉強しないと、使いこなせないと……」

 その時、エリナが叫んだ。

「カレーの匂いがする!」