身代わり王女の禁断の恋
ハールとともに
・:*:・:・:・:*:・:・:・:*:・:・:・:*:・

ハールとともに

・:*:・:・:・:*:・:・:・:*:・:・:・:*:・


クラウスに森から連れ帰られてから、ずっとクラウスかユリアに監視されて幽閉状態だったのに、その日、なぜかユリアは部屋を出たまましばらく戻らなかった。

今なら逃げ出せる?

でも、そうするとお母さまが…

私が葛藤していると、部屋がノックされた。

「どうぞ。」

と声を掛けると、開いた扉の向こうにいたのは、ずっと会いたかったハールだった。

私は、バイオリンだけを持って、ハールとともにベルンハルトの町へ向かう。


一晩、馬車に揺られて、明け方、私たちはようやくベルンハルトに着いた。


11月の海は、空と同じ鉛色をしていたけれど、一定のリズムで寄せては返す波の音は、とても心地よい響きを奏でている。


私たちは、ハーラルト子爵夫妻を名乗って宿を取る。

それと同時に、私は彼をハールではなくアルフと呼ぶことになった。

妻が夫の姓を愛称にしているなんて、違和感の塊でしかないから。


母のことは、アルフが執事に手紙を書いてくれて、引き続き治療ができるように手配してくれた。


< 77 / 155 >

この作品をシェア

pagetop