キンダーガーテン五      ~ここが居場所~
「どうした?」

「拓実君を迎えにきて欲しいの。
後の三人は、主任先生のところにいるから。
愛里ちゃんが、一人で桜の木の下にいるからお願いします。」

簡単な説明だけで、全てを理解してくれる先生。

「分かった、直ぐ行く。」

直ぐにきてくれた先生は、何も言わず拓実君の手を引いて

ひよこ組の子供が待つ砂場に歩いて行く。

一瞬振り向き、『頑張れ』と口パクで告げて。

ありがとう。

先生に勇気をもらって、愛里ちゃんのいる木に近づく。

「愛里ちゃん。」

しゃがんで、声をかけると。

「……………………唯先生。」と元気のない返事が返ってきた。

「桃組さんは、何してるの?
ひよこ組さんは、お砂場でお山作りだよ。」

「…………………………いいなぁ、ひよこ組は………。
愛里も、ひよこ組ならいいのに。」

いつもの覇気も、勝ち気さもない。

「なにかあった??」

先生に笑われそうだけど、やっぱり女子トークになってしまう。

「桃組、面白くない。」

「でも、コウ先生は楽しいでしょ?
仲良しの小春ちゃんと美波ちゃんもいるよね?」

「…………………だって、悠人先生が来ない。
ひよこ組ばかり行ってる。
………………ズルいよ!
唯先生は、悠人先生と結婚するんでしょ!!
だったら、幼稚園の時間は愛里に悠人先生を頂戴よ!!
唯先生ばかり、独り占めしないでよ!!」

愛里ちゃんの心がいっぱいになったみたい。

怒ってるのに…………泣いてるの。

淋しかったよね。

辛いよね。

ごめんね…………………。
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