5分以内で読めるショート・ホラー集
9 あの世への架け橋
あの世への架け橋



友人から聞いた話。

友人の名前をSとする。男性で、人付き合いのよい人間だ。親戚付き合いも欠かさない。

ちょうどお盆の時期のこと。
「サエコちゃん、公園で遊んでるの見かけたよ」
と小3の甥がSに言ってきた。

サエコちゃんは、幼くも五歳で病死してしまった女の子だ。
甥の住む家の隣に住んでいてS自身、何度か話したこともあった。

Sは幽霊に懐疑的な人間で、甥の話を真に受けなかった。
それに、仮にその怪現象が事実だとしても、怖いことではない。お盆の間、亡くなった女の子がこの世に遊びにきたなんて、可愛らしいではないか。

甥は続けて、こう言った。
「サエコちゃん、タケくんと一緒に遊んでいたよ。追いかけっこしてさ」
タケくんは存命である。甥と仲の良い同級生だ。では彼も、サエコちゃんを見たというのか。
Sは甥に忠告した。

「その話、他の人に話しちゃダメだよ」

亡くなった子と遊んでいたと耳にすれば、タケくんの親など、彼に近しい人がどう思うかわからない。
心配になったり気分を害する可能性もある。

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