敏腕社長は哀しき音色に恋をする 【番外編 完】
一歩を踏み出してみます。
「神崎さん、これ、今日までの期限で申し訳ないんだけど、資料作り頼めるかな?」

そう言って、書類をすまなさそうな顔を見せたのは、同期の川本君。

「見せてください。……これなら間に合いそうです。やっておきます」

「ありがとう。助かるよ。
ところで神崎さん、金曜日は何か予定ある?同期で飲み会の企画をしてるんだけど、神崎さんもどう?」

「すみません。金曜日は予定があるので」

「そっかあ。残念。同期のみんな、神崎さんとも話したいってずっと言ってるんだ。都合の合う時は、ぜひ参加して」

「気を遣わせちゃってごめんなさい」

そう返事をはぐらかすのもいつものこと。
バーでの演奏を決めて以来、ますます練習に力が入り、少しの時間も惜しいと思っていた。



定時になる前に、川本君に頼まれていた仕事を終えた。
そして、時間になると足早にスタジオへ向かった。
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