real face
第2話

前途多難

最悪だ………。
なんで私、佐伯主任とコンビ組まないといけないんだろう。
失恋の傷を癒すのは、新しい恋ですって!?
ふざけんじゃないわよ、イチにぃ……じゃない、宮本課長!!


──木曜日。
出張から帰ってきた佐伯主任に、RYUZAKI工房との打ち合わせについて報告をしなければと思い、朝イチで出勤したばかりのところを狙って話しかけた。

「佐伯主任、おはようございます。出張おつかれさまでした。今日から主任とコンビを組むように言われました。よろしくお願いします。早速ですが、月曜日にRYUZAKI……」

「ちょっと待て。俺がお前とコンビ?冗談だろ」

「聞いてないんですか?宮本課長の指示です。あの、RYUZAKI工房の件で報告があるんですが」

「……ああ、しょうがないな。ミーティングルームで聞くから。先に行ってて」

「はい……」

本当にまだ知らないんだ、主任。
『冗談だろ』って、こっちが言いたいセリフだわ。


「……以上です。貴浩部長に佐伯主任からも連絡をお願いします」

「わかった。じゃ続きは朝礼後にココで」

そう言ってさっさとミーティングルームを出ていく佐伯主任。

あ……言いそびれてしまった。
何のために朝イチを狙ったのか。
仕方ないから、またチャンスを窺うしかない。
朝礼後にも打ち合わせ続けるらしいから。

佐伯主任は私とコンビ組むことに納得いってないみたいだし、これからどうなるんだろう?
宮本課長は『女性社員にもどんどん外に出てもらう』と言っていた。
ということは、佐伯主任と行動を共にするってことなんだろうけど。
あんなことした割にはそっけないし、何を考えているんだろう。
私からの反応を待ってるとか?

朝礼中に佐伯主任の横顔を盗み見る。
無表情。
何も考えていない、という訳ではないんだろう。
全ての感情を押し殺しているかのように見えるのは……気のせい?



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