real face
第1話

人事異動

(あららぎ) まひろ、23歳。
今日、4月1日が誕生日。
高校を卒業し、社会人になって丸5年経った。

"㈱シャイニング"が私の勤務先。
『働くアナタを支援します』というモットーの元、快適な職場環境を作るためのお手伝いをしている会社だ。
私が入社した5年前、ちょうど新規事業を立ち上げる時期で、その新しい部署に配属されたのだった。

『学ぶアナタを応援します』がモットーの教育関連事業部。 正式名称は "ラーニングセクション" (通称・ラーセク)という。
私はその、ラーセクの "教育事業部1課" に所属している。

因みに既存のオフィス関連事業部は "ワーキングセクション" (通称・ワーセク)
それともうひとつの柱、統括管理部門 "シャイニングセクション" (通称・シャイセク)もある。
そして、今年度からまた新規事業を立ち上げるらしい。

『羽ばたくアナタをサポートします』をモットーに掲げた海外事業部の"フューチャーセクション"
ここはこれから始まる部署のため、定着した通称はまだない。

今回の新規事業部立ち上げに伴い、大きな人事異動があった。
私も密かに異動を期待していたけど、まだラーセクから抜け出せないらしい。

──1ヶ月前。

年度末を迎え、慌ただしさを増す3月。
来年度の新体制、つまり人事異動の発表が全社員に向けて行われた。
異動が決まっている該当者にはもう既に通知があっているはずなので、私に異動の予定が無いのは百も承知している。
それなのに、食い入るように掲示板に張り出された辞令を見つめているのには訳がある。

「あ………。やっぱりあの噂、本当だったんだ……」

"新・フューチャーセクション 海外留学サポート課・課長 『木原譲司(きはら・じょうじ)』 旧・ラーニングセクション 教育事業部1課・課長"

木原課長、異動になってる。
彼は私の上司で、私の想い人。
いや、想い人って言うのはちょっと語弊があるかも。
私が結婚相手にしたいと狙っていた男性。


"狙っていた"

なぜ過去形なのかというと、彼の異動が決まったのに私の異動が無い時点で可能性が消えたという事を悟ったから。
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