real face

実力主義  ※佐伯翔真視点

俺がシャイニングに入社して、丸6年。
営業部で2年、広報部で4年。
そして今年度からは初めてのラーセクに異動となった。

"教育事業部1課"

今までとは全く畑違いの部署だが、ラーセクには興味があったから異動には特に不満はない。
なんと言っても、イチにぃからの打診だったし。

イチにぃ…宮本一弥。
この会社で信用できる人間なんてそうそういないが、この人だけは別だ。
入社する前からよく知っているし、信頼している。宮本課長は、俺の大学時代のダチ、宮本修一(しゅういち)の兄貴だ。

入社してからもよく目をかけてくれているのはありがたいことだけど、よく飲みに付き合わされるのが玉にキズ。
なにかと大事な話を酒の席でしたがるから、ウンザリする時もあるっていうのが本音。
そして俺の知らない間に弱味を握られていたりするから、侮れないのも事実だ。



──3月。

来月の着任に向けて、引き継ぎのために、教事1課に初めて来た。
課内の様子を見るために早めに出勤してきたのに、先客が1人。
女性社員がセカセカと動いて準備でもしているらしい。

「あの、来月からこちらに異動になります……」

佐伯(さいき)主任、ですよね?おはようございます。私は蘭です。どうぞこちらへ」

『あららぎ』さん。
第一印象、化粧がキツイ。
ニコリともしない無愛想な女。

だけど面識ないはずなのに、ちゃんと俺の名前を『さいき』って呼んだ。
初対面の奴は大抵『さえき』って間違えて呼ぶのに。

「まだ確定ではありませんが、デスクはこちらをお使いください。8:30から朝礼ですので」

そう言うと去っていった、蘭さん。
まだ準備が終わらないのか、ずっと動きっぱなしだ。
いつもこんなに早い時間から出勤しているのだろうか。


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