葵生さんと“契約”を交わしてからちょうど十日目。

日々多忙を極めている彼は今、なんでもニューヨーク支社へ出張に行っているらしく、そのおかげなのか結婚が決まったからと言って私の生活になんら変化はなかった。




「お見合いとか接待がない休日って最高かもしれない」

スルメイカを口に咥えながらベッドの上でゴロゴロできる休日に、涙が出そうなほど感動している真最中だ。



両親や楡屋敷家の人達に改めて報告をしに行った一週間前、葵生さんと私の間にできた“契約”を知る由もない彼らは大層よろこんで、そして歓迎してくれた。

父はこれでようやく会社が安定すると言って安堵し、母は私の結婚が決まったことを泣いて歓喜した。


なんだか騙しているようで申し訳ない気持ちもあったけれど、この結婚の最大の目的である《互いの会社の利益》を上げさえすればきっと、あとは差しずめ問題はないだろう。