捨てられる前に捨てましょう
婚約者とは犬猿の仲
高貴な喧嘩
「ソフィア様……よろしいのですか?」
「ええ、構いませんわ。皆アディ様にご挨拶がしたいのでしょう」
私は、恐々と声をかけて来た伯爵令嬢に鷹揚に微笑みそう答えた。
「まあ、なんてお心の広い」
伯爵令嬢は、ひときわ高い声を上げる。
「あら、そうかしら?」
「ええ、わたくしでしたら耐えられませんもの。さすがは名門クラウザー公爵家のご令嬢ですわ」
私は媚を含んだ言葉に返事をする代わりに、目を細めた。
心の中では、盛大に罵詈雑言を吐きながら。
私、ソフィア・クラウザーは、ハルシュタイン王国で二つしかない公爵家の長女として生まれ育った。
亜麻色の髪に緑の瞳。背丈は平均よりやや低くやせている。
身分と大人しそうな外見から箱入り令嬢とみられがちだが、実は気持ちも身体も結構強い。
クラウザー公爵家は武門の家で、生まれて来た子供は皆武人になるよう躾けられる。
私も女だからと特別扱いはされず、幼い頃からとても厳しい訓練を受けて来た。
苦しくて泣きごとを言っても聞き入れられず、怪我をしても気力で乗り切れと、貴族令嬢とは思えないような教育方針。
非情に厳しい日々だったが、なんとか乗り切り今日まで来た。
おかげでちょっとしたことでは、めげない、泣かない。
傷つくような出来事に直面しても、悲しむよりも先に、負けるものかと闘志が湧いて来るような勇ましい性格に、いつの間にかなっていたのだ。
「ええ、構いませんわ。皆アディ様にご挨拶がしたいのでしょう」
私は、恐々と声をかけて来た伯爵令嬢に鷹揚に微笑みそう答えた。
「まあ、なんてお心の広い」
伯爵令嬢は、ひときわ高い声を上げる。
「あら、そうかしら?」
「ええ、わたくしでしたら耐えられませんもの。さすがは名門クラウザー公爵家のご令嬢ですわ」
私は媚を含んだ言葉に返事をする代わりに、目を細めた。
心の中では、盛大に罵詈雑言を吐きながら。
私、ソフィア・クラウザーは、ハルシュタイン王国で二つしかない公爵家の長女として生まれ育った。
亜麻色の髪に緑の瞳。背丈は平均よりやや低くやせている。
身分と大人しそうな外見から箱入り令嬢とみられがちだが、実は気持ちも身体も結構強い。
クラウザー公爵家は武門の家で、生まれて来た子供は皆武人になるよう躾けられる。
私も女だからと特別扱いはされず、幼い頃からとても厳しい訓練を受けて来た。
苦しくて泣きごとを言っても聞き入れられず、怪我をしても気力で乗り切れと、貴族令嬢とは思えないような教育方針。
非情に厳しい日々だったが、なんとか乗り切り今日まで来た。
おかげでちょっとしたことでは、めげない、泣かない。
傷つくような出来事に直面しても、悲しむよりも先に、負けるものかと闘志が湧いて来るような勇ましい性格に、いつの間にかなっていたのだ。
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