捨てられる前に捨てましょう

修羅場?

アルニム侯爵家のべルティーナとアディが、王宮の中庭で堂々と抱き合っていたのだ。

いくら王族専用のスペースだからと言っても、ありえない。

王族に仕える使用人たちが近くの回廊を通ることだってあるのだから。

だいたいべルティーナを王族の居住区に入れること事体普通じゃないと言うのに。

しかも今日私が王宮に来ると知っていたはず……なのにこの状況ってどういうこと?

驚きは次第に怒りに変わっていく。

これはつまりべルティーナと浮気しているってことよね。それで理由は分からないけど気分が盛り上がって人目も憚らずに抱き合ってしまったという訳よね。

『俺はソフィア以外と結婚する気はない』

つい先日聞いたアディの声が脳裏に蘇る。

いつになく真剣な表情で、はっきりと宣言していたって言うのにあれは何だったの?

「ソフィア様?」

立ち止まった私を不審に思ったのか、案内役の女官が声をかけて来た。

直後私の視線の先を追ったのか、彼女は慌てて弁解を始めた。

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